補足:保全処分と婚姻費用

家事審判法第15条の3は,家庭裁判所は,家事審判の申立てがなされた時に仮差押え等の必要な保全処分(「審判前の保全処分」)をすることができると定めています。(婚姻費用分担に関する審判について,家事審判規則第51条)。

保全処分には仮差押や仮処分がありますので,相手方の財産を対象に仮差押をする,あるいは婚姻費用の仮払い(仮処分)を求める等,どんな内容の保全処分を するかを,保全処分を求める理由とともに審判申立先の家庭裁判所に明らかにして保全処分の申立をすることになります(家事審判規則第15条の2参照)。

なお,この審判前の保全処分は,審判の申立がなされていることが形式要件になります。審判前の調停の段階では,直接この定めを用いることはできません(審判申立後の調停時には利用可能です)。

調停については,類似する手続として「調停前の処分」(家事審判規則第133条)があります。これは調停委員会がなす処分ですが,審判前の処分と違って執行力がありません。

執行とは、その命令書等に書かれた金銭の支払義務等を強制実現することです。裁判所の判決や調停調書などに認められるものです。

審判前の保全処分は,これに従った支払が相手方からなされない場合には直接相手の財産への差押え等をなすことが可能ですが,調停前の処分ではこれができないので,相手への強制力が審判前のそれに比べて低いといえます。

その為調停前の処分では,相手方の履行を促すために,処分と同時に,これに違反した場合には法律上の制裁を受けることを支払義務者に告知することになっています。